世界の名作「アルジャーノンに花束を」が2015年4月10日(金)からドラマとして放送されます。
原作は今な亡きダニエル・キイスさん。
不思議なくらい、主人公の複雑で繊細な心情を描き表しています。
とても感動的で、最後は何が幸せなことなのかを考えさせられる作品です。
さて、ここでは原作のあらすじとネタバレについて書いていきたいと思います。
利口になりたい主人公「チャーリイ」
主人公「チャーリイ」は32歳だけれど、知的障害者なので知能は高くありません。
普段はパン屋で働いており、また、大学の知的障害成人センターで勉強もしていました。
パン屋で働けている理由は、チャーリイの伯父がパン屋の店主に頼んでくれたからです。
チャーリイは、「みんなと同じように頭が良くなりたい」と願っていました。
なぜかというと、いつか周囲のみんなが話していることを理解したいと思っていたから…
そして、いつか利口になって親を喜ばせたかったから…
頭の良くなる手術とねずみの「アルジャーノン」
するとある時、大学の教授と博士が「頭が良くなる手術をしよう」と言いました。
知的障害者の知能を上げるための手術です。
しかし、未だ人間においてこの手術には前例がありませんでした。
チャーリイが人間第一号の実験者となるのです。
そのため必ず成功する保証はなく、何か副作用がある可能性もありました。
それでもずっと利口になりたいと思っていたチャーリイは、この手術をすることを快く受け入れました。
以前、この手術はネズミに対して行われていました。
そのネズミの名前は「アルジャーノン」
手術の結果、通常のネズミと違い学習能力が備わり、とても利口になっていました。
少しずつ効果が現れることと環境の変化
手術は成功。
しかし、すぐに頭が良くなるわけではありません。
チャーリイはすぐに利口になれると思っていたので、ガッカリ。
とにかく以前からやっていた経過報告の日記を書くことや、訓練をしながら少しずつIQを上げていきます。
訓練の1つに、アルジャーノンと迷路対決をするものがありました。
最初は何度もアルジャーノンに先にゴールされてしまい、負け続きだったのですが、いつからかチャーリイが勝てるように。
また、経過報告の日記には適切な位置に句読点を打てたり、漢字が書けるようになったり。
そして何より、過去の記憶が鮮明に思い出せるようになってきたのです。
そう、自分が知的障害者だった時の記憶も…
チャーリイの頭がどんどん良くなっていくことに、周囲は困惑。
やがてパン屋の従業員の皆から恐がられ、避けられるようになっていきました。
現実
パン屋で働いている時、同じ従業員の友達は、みんな自分の事が好きだと思っていました。
良い友人であると感じていました。
しかし今過去の出来事を思い出すと、チャーリイは友達だと思っていた人たちにからかわれ、バカにされていたということに気付きます。
そして昔家族で暮らしていた時は、母親から「何でこんなことも出来ないの?」「いつか普通の子のように利口にならないとね!」などとプレッシャーをかけられていたり、妹が生まれてからはのけ者にされていたことを思い出します。
さらに、今まで大学の先生や教授、博士はすごい人だと思っていたのに、本当は普通の人間で特別すごい訳ではないことや、人間というのは自分の利益のために人を欺くようなことをすることを知りました。
加えて「愛」というものも学習しました。
チャーリイのIQは常人をはるかに超えて、天才となったのです。
図書館には頻繁に行き、たくさんの本を読むことで20ヶ国ほどの言語が喋れるようになりました。
あらゆる学問についても、教授や権威の人よりかなり詳しくなりました。
しかし、周囲は知能の高まりを喜ぶどころか、突け離すように…
なんと、パン屋をクビになってしまうのです。
シカゴで研究発表会
いうなれば、チャーリイは実験物。
チャーリイを利口にする手術を行った教授や博士は、シカゴでチャーリイの研究発表をすることになりました。
ニューヨークから飛行機でシカゴへ。
研究発表では教授がこんなことを言っていました。
「私たちの手術により、チャーリイは人間として誕生したのです」
まるで手術前のチャーリイは人間ではなかったとでいうような言いぐさです。
チャーリイはとても腹立たしく感じました。
手術前も心のある人間だったとはっきり分かっているチャーリイは、教授に怒りを感じたのです。
脱走
まるで今のチャーリイは教授たちが作り出したかのように言われたので、心の中でとても怒りました。
そこで、これから研究発表として見せるはずだったねずみの「アルジャーノン」をチャーリイは会場に逃がしたのです。
会場は大パニック、大混乱!
チャーリイはアルジャーノンを見つけて胸ポケットにしまい、「共に逃げよう」と考えました。
そして会場を抜け出した一人と一匹は、まずニューヨークに戻って、アパートを借りることにしました。
頭がいいということ
利口になるということは、チャーリイが思っていたような良いことばかりではありませんでした。
世の中の悪い部分が見えたり、友達がいなくなってしまったり…
知能がアップすることで、チャーリイは傲慢で自己中心的な態度を取るようになりました。
なぜなら誰と会話をしても相手の話すことが幼稚に聞こえ、自分の会話レベルに付いて来れないからです。
そのため、周囲の人間からはうっとうしく思われるようになってしまったのです。
自分がすべきこと
「今の自分がすべきことは何なのだろうか…?」
自分にしか出来ないこととは、この手術の経過を記録し、本当に効果があるのかを確かめること。
この実験の結果を明らかにすることで、かつての自分のような知的障害者のためになることが判明するかもしれません。
チャーリイは、研究を始めました。
結論
ネズミのアルジャーノンは、そのうち狂ったような行動を取るようになっていきました。
学習能力も落ちていっています。
チャーリイはこの謎が分かりませんでした。
しかしもしかしたら、自分も将来このようになってしまうのでは?と疑念を抱くように。
やがてアルジャーノンは死んでしまいます。
IQの高いチャーリイに取っては「ただの気休め」と分かっていましたが、アルジャーノンをアパートの裏庭に埋めてあげて、お花をたむけました。
そして涙したのでした。
どんどん知能がアップするチャーリイは、ついに研究の結論に至ります。
“人工的に上げられた知能は、その速度に比例してやがて収縮していく”と…
結末
チャーリイの計算からすると、もうすぐ知能の低下が始まることは明らかでした。
今までの利口なチャーリイから、元の知的障害者のチャーリイに戻ってしまうのです。
この恐怖で自暴自棄となり、人にも会いたくなくなるほどでした。
しかし、やり残したことがあります。
それは、
- それは両親や妹に会って、利口になった自分を見てもらうこと
- 最後まで経過報告を書き続けること
などです。
実際は父はもうチャーリイのことを覚えておらず、母も老化で物忘れが酷い状態でした。
妹は利口になった兄チャーリイに出会えたことで歓喜し、「一緒に暮らそう」と言いましたが、そうもいきません。
これまで愛し合っていた大学の先生(アリス・キニアン)とはしばらくアパートで一緒に暮らしていましたが、知能が下がっていくチャーリイは、次第にアリスを怒鳴るようになります。
「一人にしてくれ!勝手なことはするな!」と…
経過報告の日記もうまく書けなくなり、思考も元に戻っていきます。
何かしなければと思い立ち、以前クビになったパン屋へ。
すると、店主や従業員は快く知能の低いチャーリイを受け入れてくれました。
独りぼっちだったチャーリイに、また友達が出来たのです。
ある日、知的障害者のチャーリイは大学の知的障害成人センターへ、なんとなく行きました。
以前、勉強しに行っていたところです。
そこでは知能が高い時に愛し合っていたアリス・キニアン先生が。
ここでキニアン先生はチャーリイが変わり果ててしまった(完全に元に戻ってしまった)ことにショックを受け、泣きながら教室を出てしまいます。
チャーリイは「悪いことをしてしまった」と感じるのです。
そして…
チャーリイはウォレン学校(知的障害者がずっと暮らす保護施設)に行くことを決心するのです。
もう誰にも「チャーリイはかわいそうだ」なんて思われたくなかったのです。
知能が高かった時は「こんなところに行きたくない」と思っていましたが、今はそれを受け入れています。
チャーリイは満足していました。
一時的に知能が高まったことで、今まで知ることが出来なかった様々なことを知ることが出来ました。
「利口なこと」が一番ではなく、人間には「友達がいること」「愛すること」が必要なのだと知りました。
チャーリイはウォレンの学校に行ってもたくさんの友達をつくろうと、前向きに進んでいくのでした。
そして最後の経過報告には、
「もしついでで余裕があるのなら、アパートの裏庭にあるアルジャーノンのお墓に花束をたむけてください」
と記したのでした。
~アルジャーノンに花束を~